【API MC531】コンソール銘ブランドAPIからリリースされたモニターコントローラー「MC531」を紹介します。

機材

皆さんよくご存じかと思われるブランドAPI。APIと聞いたときどのようなことを思い浮かべるでしょうか?

1608を始めとするコンソールや、500シリーズ、バスコンプレッサーなどを思い浮かべた方が多いのではないでしょうか。

Electric TenguではAPIから発売されているモニターコントローラー「MC531」をテストする機会を頂いたのでブランドや製品について、「MC531」にどういった活用方法があるのかなどをご紹介いたします。

まず今回はAPIの概要と「MC531」の基本的なスペックをご紹介致します。

ブランド 概要

2019年に50周年を迎えたAPI(Automated Processes Incorporated)は、「最高品質のプロフェッショナル・オーディオ機器を作り、優れたカスタマーサービスでバックアップする」という共通のビジョンを持ったエンジニアとミュージシャンによって1969年に設立されたプロフェッショナル・オーディオ機器ブランドです。

ミキシングコンソールのコンピュータ化やオートメーションなど、現在では標準ともいえる機能を初めて世に送り出したブランドでもあります。
プラスティックフェーダーやディスクリートオペアンプ、入出力トランスと次々とオリジナルパーツを開発し、その品質は現在でも高い評価を得ています。
日本でも一世を風靡したこのAPIコンソールは、各モジュールがアウトボードプロセッサーとして重宝され、モジュールを装着して持ち運び、様々な場所で容易にいつものモジュールが使えるようにできる「ランチボックス」も人気を博し、 時代を超えたサウンドキャラクターが人気でした。

「MC531」製品概要

MC531 モニターコントローラー

MC531はAPIのアナログコンソールのセンターセクションをモニターコントローラーとしてスタンドアローン化した製品です。

特にDAWを環境のワークフローを効率化することを念頭に置いて設計されており、正確なリファレンスが求められるあらゆる制作環境にシームレスに統合することができます。

さらにMC531には、APIコンソールと同じ回路を搭載し、これまでに開発されてきたAPIコンソールのモニター・コントロール・モジュールからインスピレーションを得て、多くの制作環境がさらに便利になる追加機能が搭載されています。

フロントパネル

まずはフロントパネルのコントロール類をご紹介します。

フロントパネルは非常にわかりやすくレイアウトされており、左側にトークバックやスピーカー操作がまとめられており、中心には音量関連の操作子、そして右側に入力ソースや出力スピーカー選択とヘッドフォンモニターコントロール類がまとめられています。

では各コントロールを詳しく見ていきましょう。

C/R Level & DIM

MC531本体のセンターにはモニターへの出力レベルを調整するC/R LevelのノブとDimスイッチ、Dimレベルノブが配置されています。C/R Levelノブは41ステップノブになっているので、特定のポジションに正確に合わせることが容易です。

DimスイッチはONにするとDimレベルノブで設定した音量に出力レベルを下げます。Dimレベルノブは右に回し切った状態でC/R Levelからの減衰は0(音量変化なし)から左に回すにつれて減衰量が変化します。

トークバック & モニターコントロール

MC531の左側にはトークバックとモニターコントロールがまとめて配置されています。トークバックはAPIのコンソールに使用されているものと同じものが使われており、トークバックゲインは埋め込まれているマイクの左に配置されている赤いGainノブで調整します。埋め込みマイクの下に配置されているTALKBACKボタンを押すと押している間動作し、ヘッドフォンにトークバックが送られます。(動作中はボタンが赤く点灯します)またトークバック動作中はDIMが同時に動作します。

モニターコントロール部にはAPIボタン、LT/RTボタン、MONOボタン、CUTボタンが配置されています。

まずTALKBACK横に配置されているAPIボタンですが、こちらのボタンを押すことで出力回路が変更され、動作中はモニター出力がAPI2520とカスタムトランス回路を通って出力され、APIボタンを押した状態にするとよりAPIらしい音となります。

このAPIボタンを押すと具体的にどのような変化が起こるかですが、端的に言うと中低域~中域の厚みが出て音が半歩前に出てくるような印象でした。変化は非常にマイルドなものですが、ボーカルやコーラス、ストリングスやホーンセクションなどで聴き比べるとわかりやすいかもしれません。

次にモニターコントロール部分ですが、LT/RTボタンは左右のスピーカーを個別にミュートすることが出来るボタンです。MONOボタンは文字通り、ステレオ信号をモノラルにサミングして聞くことが出来ます。Mixの中では位相のチェックなどでよく使われる機能だと思います。そしてCUTボタンはモニターをミュートするミュートボタンとなっています。

入力ソース セレクター

MC531には5つの入力ソースセレクターが搭載されており、合計で7種類のオーディオソースをモニターすることができます。(一度に選択できるソースはひとつのみ) 各入力ソースはAPI 2510オペアンプでバッファリングされています。

選択できる入力ソースは3つのカテゴリーに分かれています:
•アナログ (ST-1, ST-2, ST-3)
•デジタル (ST-4): USB or AES
•民生機器 (ST-5): 3.5mm MINI プラグ または Bluetooth (BT)

ST-4はUSB/AES、ST-5はステレオミニプラグ/BTのそれぞれ2種類の切替が搭載されており、選択後に再度長押しをすることで、ST-4はAES、ST-5はBTへと切替することが出来ます。(AES、BT時はボタンが緑点灯)


入力ソース選択で特に便利だと思ったのはやはりBTが使用できる点でした。BT対応製品でありがちなデバイスが表示されないなどの問題をはじめとする接続に関する問題も特になく、快適に使用することが出来ました。クライアントや共同作業者のスマートフォンやノートPCをBT接続するだけでいつものシステムで簡単に視聴ができるのは容易に想像できますが、オーディオインターフェースの電源をOFFにした状態でもST-5のソース経由で気軽にモニタースピーカーが使用できるのも非常に良いと感じました。

また、USBインターフェースを搭載しているので別のPC/MACをメインのインターフェースに繋ぎなおすことなくシステムのスピーカーで聴ける点も複数名での作業に便利な機能だと思いました。

入力ソースメーター

入力ソースメーターには選択された入力ソースのレベルが表示されます。
レンジ幅は「-24dBu ~ +24dBu」となっており、18セグメントLEDメーターを使ってレベル表示されます。

入力ソースメーター動作(無音)

メーターは反応がとてもよくオーディオインターフェースで表示されるメーターと比べると当たり前ですが見やすいです。Electric TenguではオーディオインターフェースにPrism SoundのTitanを使用していますが、レベルメーターは普段ソフトウェアミキサーやtc electronicのCLARITY M Stereoなどで確認していますが、実際にLEDメーターが確認できるだけで気分的に作業がはかどります。

モニターセレクター

MC531には3系統のステレオモニターを接続可能で、そこにサブウーファーを1系統接続することが出来ます。2系統目、3系統目にあたるALT1、ALT2、そしてサブウーファーの各スイッチの上部にはトリムが搭載されており、Mainに接続したスピーカーの音量とマッチさせることが出来ます。

また、特定の出力にサブウーファーをリンクさせることも可能です。リンク方法はリンクさせたい出力を長押しするとボタンが緑点灯に変わるので、その状態でサブウーファーのスイッチを押すとサブウーファースイッチも緑点灯となり、リンクします。(リンク解除は同様の操作でサブウーファースイッチの緑点灯を解除することで可能です。)


Electric Tenguの環境ではFocalのShape Twinをメインに接続し、AvantoneのActive MixcubesをALT1に接続してテストをしました。ALT1のトリム調整は微妙な回し加減が難なくできる重さになっていたので数分で調整が完了でき、非常に楽でした。

ヘッドフォンコントロール

MC531には2系統のヘッドホンモニターが搭載されており、それぞれにON/OFFスイッチとC/Rを出力するかCueを出力するかのセレクターが搭載されています。

Cueのソースとなるインプットは入力ソース選択スイッチの上部の緑のLEDで表示されます。Cueソース選択の方法はHP-1またはHP-2のON/OFFを長押しするとHP-1とHP-2のON/OFFスイッチが緑に点滅するのでON/OFFスイッチを押したまま入力ソース選択ボタンを押すことで選択することが出来ます。

ヘッドホンCueソース選択操作(無音)

入出力パネル

続いて背面の入出力パネルを解説します。

背面の入出力は分かりやすく上半分に入力系、下半分に出力系が整然と配置されています。

入力系統

MC531は、3つのアナログ・ラインレベル入力、AES、USB、3.5mm、Bluetoothの合計7つのステレオ入力が搭載されており、アナログ3系統はTRS端子、デジタルはAES3 XLR端子とBタイプUSBで接続することができます。また、民生用入力として3.5㎜ステレオミニTRS端子とBluetooth受信用アンテナも背面に設置されています。

3.5㎜ステレオミニTRS端子は本体正面のBluetoothペアリングボタンの横にもあるので、そちらを使用することのほうが多いかと思いますが、様々なユースケースを想定して背面にも設置していることが伺え、あらゆるシーンに対応できるようにしたいというAPIの思いが伺えました。

出力系統

出力端子は背面下部にまとめられており、スピーカーを接続する端子となるMAIN、ALT-1、ALT-2、SUBはXLR端子となっており、その横にヘッドホンを接続するステレオTRS端子が配置されています。

これらの入出力に加えMC531にはMETER出力端子がTRS端子で搭載されています。この端子に別途VUメーターなどを接続して使用することもできます。

数日間使っての印象

Electric Tenguでは今までモニターコントローラーをあまり使用せずにモニタースピーカーをパッチベイで繋ぎ替えて使用しておりました。そのため、繋ぎ替える手間などが面倒だった事からメインで使用しているFocal Shape Twinが9割、残り1割をAvantone Mixcubesで作業を行っていた状態でした。しかし、一度このモニター・コントローラーをシステムに組み込んで作業を行ったところ、ボタン一つでスピーカーを切替れるというのは思った以上に作業に良い影響があり、普段のパッチペイを使ったシステムよりもAvantone Mixcubesでの確認を気軽に行えるようになりました。その結果、音作りが非常に楽になりました。

まとめ

今回は、APIのMC531をテストする機会を頂きましたのでレビューシリーズの導入として本機の機能面を中心に紹介いたしました。

モニターコントローラーという入力ソースと出力スピーカーを切り替えることがメイン機能として設計されているため、ほかの機材よりも注目されないことが多い製品ですが、モニターコントローラーを導入することで思った以上に作業効率が上がることを再確認しました。

モニターコントローラーは多くのメーカーから様々な価格帯のものが販売されており、このAPI MC531はその中でも40万前後というかなり高い価格帯となっているので気軽に導入できる方はあまり多くないと思います。しかしながら、Electric Tenguは本機を試用した結果ボーカルやギター、ベースのトラッキングを行うことがメインのプロジェクトスタジオ程度の規模であればこのAPI MC531を活用して作業効率を飛躍的に上げることが出来ると強く思いました。導入する価値はあると思います。

先に述べたように、この製品は特にボーカルのレコーディング、ギターやベースのレコーディングのみに対応するような小~中規模のプロジェクトスタジオのような環境で真価を発揮すると思われますので、次の記事では実際にそのようなユースケースを想定したシステム案などとあわせて効果的な使用方法をご紹介いたします。

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